殺処分数を減らすには(2) 犬(成熟個体)の統計 その1

前回は「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)から、令和4年度に全国の自治体で引取られた犬や猫の数をざっくりと見ていきましたが、今回からは少し詳しく見ていきましょう。

 

犬(成熟個体)の内訳

まず、犬(成熟個体)の内訳を見ていきましょう。ここでいう「成熟個体」とは、離乳後の個体のことです。

 

<収容>

飼い主から:2,392 (13.2%)

飼い主不明:15,727 (86.8%)

<結果>

飼い主への返還:8,099 (44.7%)

譲渡:8,113 (44.8%)

殺処分(収容中の死亡を含む):2,091 (11.5%)

 

飼い主からの引取り

犬(成熟個体)については猫ほど多くはありませんが、飼い主からの引取りが一定数あります。その理由まではこの統計ではわかりませんが、私の経験でいえば「飼い主の死亡、入院もしくは入所」、「管理不能の性質」が多いようです。また「予定外の繁殖」という理由も多いですが、このことについては後述します。

 

飼い主の死亡等

最近増えているのが、飼い主の死亡や病院への入院、福祉施設への入所などによる引取り依頼です。その際には親族等が引取るのが本来の姿ですが、親族が集合住宅に住んでいる等でそうもいかない場合も多いです。ただし猫と異なり、犬は通常1~数頭で飼われているため、引取り頭数が極端に増えるといったことはあまりありません。元飼い犬ですから譲渡は比較的容易ですが、特に高齢者が飼っていた犬の中にはネグレクト気味で状態の悪い個体も見受けられます。

 

管理不能の性質

飼い犬が「手に負えなくなった」ことを理由とした引取り依頼も、近年増えています。本来動物側の理由による引取りは不可で、飼い犬を飼い主が制御できないような場合はまず専門家への相談を勧めます。それでもどうしようもなく、周辺に生活安全上の問題を与えかねないような場合には引取り対象としています。以前はしつけに失敗した日本犬の引取りが多かったのですが、近年は元野犬の引取りが増えています。つまり安直に野犬を譲り受けたものの、飼いきれなくなったというパターンです。こういった理由で引き取った犬は「譲渡不可」と判断されることが多く、ほとんどが殺処分されます。