殺処分数を減らすには(4) 犬(幼齢個体)の統計 その1

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)から、令和4年度に全国の自治体で引取られた犬や猫についての統計を見ています。

 

犬(幼齢個体)

次に犬(幼齢個体)について見てみましょう。ここでいう「幼齢個体」とは、離乳前の個体を指します。

 

<収容>

飼い主から:184 (3.8%)

飼い主不明:4,614 (96.2%)

<結果>

飼い主への返還:34 (0.7%)

譲渡:3,796 (79.1%)

殺処分(収容中の死亡を含む):513 (10.7%)

 

飼い主からの引取り

幼齢子犬の、飼い主からの引取り依頼は「ほとんどない」と言い切ってよいほど少ない件数です。しかしそこには理由があります。幼齢子犬の引取り依頼のほとんどが「予定外の繁殖」によります。繁殖制限は飼い主の責務ですから、生まれてしまった子犬の譲渡先は飼い主が探すのが筋ですが、どうにもならない場合は引取らざるを得ません。しかし幼齢子犬の管理には手間がかかりますし、子犬の健康や社会化の点からは離乳までは母犬のもとに置くことが望ましいですから、子犬の離乳を待って引取るパターンが多いのではないかと推測されます。そのため、幼齢子犬の引取り数は極端に少なくなります。

 

飼い主不明の幼齢犬

不可抗力によるものならともかく、幼齢(離乳前)の子犬が自発的に逸走することは通常考えられないため、「飼い主不明の幼齢犬」はほぼ「野良犬の子」と考えてよいでしょう。それでも引取り数が幼齢猫よりも大幅に少ない理由として、次のことが考えられます。

 

離乳まで「泳がせて」いる

飼い主からの引取りと同じ理由で、野良猫の子犬の場合も離乳するまで待って保護する(捕獲ではない)パターンが多いのではないかと考えられます。なお生後3か月齢までの子犬は「狂犬病予防法」の規定による登録や予防注射が義務付けられていないため、捕獲や抑留の対象にはなりません。しかし成犬まで成長してしまうと捕獲が困難になるため、予防的措置として離乳直後の子犬を保護することは一般的に行われています。なおこれは「狂犬病予防法」の規定に基づく捕獲ではなく、あくまでも「動物愛護法」の規定による保護の扱いになりますので、公示期間の定めがなく即譲渡が可能です。(続く)