殺処分数を減らすには(7) 猫(成熟個体)の統計 その2

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)から、令和4年度に全国の自治体で引取られた犬や猫についての統計を見ています。

 

猫(成熟個体)<続き>

 

飼い主不明猫の引取り

前述のとおり、多くの自治体が飼い主不明の猫の引取りを拒否しています。その根拠は「動物愛護法」第35条第3項に規定されている「引取り拒否」条項です。勘違いしている担当者が多いのですが、この条文の正しい読み方は「所有者不明の犬や猫が自治体に持ち込まれた場合、引取らなければならない。ただし一定の条件下において、引き取りを拒否することができる」のです。ともかくこの条項のおかげで猫(成熟個体)の引取りはかなり減りましたが、それでも一定数の引取りが発生している理由は次のとおりです。

・「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれ」がある場合は引取りを拒否できません。ただし「おそれ」の評価方法は自治体によって異なります。町内会レベルの申し出を求める自治体もありますし、個人の主観でもよいとする自治体もあります。

・飼い猫である可能性が高い猫の場合、引取ったうえで飼い主を探すことがあります。拾得物として警察に届けられた猫が動物管理機関に送られることもよくあります。

 

飼い主への返還

飼い主不明として引取られた猫(成熟個体)のうち5.5%(全体の収容数のうち2.9%)が飼い主に返還されています。犬と比べて猫の返還率は極めて低いのですが、その理由として次のようなことが考えられます。完全屋内飼育の猫が逸走した場合であれば、飼い主はすぐに逸走に気づきます。しかし外に出している猫の場合、逸走したとしても飼い主は「そのうち帰ってくる」とのんびり構えていることが多いのです。そのうち「これはおかしい」と探し始めますが、すでにその猫が自治体に保護されていた場合、飼い主が探し始めたころにはすでに処分(譲渡や殺処分)されていることも多いのです。猫については公示期間の定めがないため即日処分も可能ですが、飼い主を探すため1週間以上の公示期間を設けている自治体もあります。

 

譲渡

引取られた猫(成熟個体)の約半数は譲渡されています。その中には自治体から直接譲渡された数のほか、保護団体に引き渡された数も含まれます。

 

殺処分

猫は犬よりも殺処分率が高いのが特徴です。この統計だけではどのような猫が殺処分されたのかはわかりませんが、元飼い猫は譲渡が比較的容易であると考えられるため、殺処分された猫の多くが飼い主不明の猫であったと推測されます。