「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)から、令和4年度に全国の自治体で引取られた犬や猫についての統計を見ています。
猫(幼齢個体)<続き>
「事務提要」の自治体別データを見てみると、某政令市のように野良猫の繁殖制限に積極的に取り組んでいる自治体であっても、それなりの数の幼齢子猫を引取っていることがわかります。その原因はよくわかりませんが、積極施策ゆえに幼齢子猫の存在も逆にあぶり出されてしまっているのではないかと推測されます。もしくは幼齢子猫にも誠意をもって対応しているともいえます。逆に全く何もしていないくせに幼齢子猫の引取り数が比較的少ない自治体があったりもします。何もしなければ幼齢子猫の存在にも気づきませんし、もしかして幼齢子猫の引取りすら拒否しているのでは?とも疑いたくなります。
幼齢子猫の管理上の問題
幼齢子猫の引取り数の多さも問題ですが、ケアに手間がかかることが大きな問題です。特に4~6月は幼齢子猫の収容が多く、どこの自治体も非常に忙しいと推測されます。ウチの自治体にはミルクボランティア制度がなかったので、幼齢子猫が溢れかえっていたときにはその世話だけで1日が終わるなんてこともありました。そのことが他の動物のケアに与える影響も無視できません。ミルクボランティア制度を設けている自治体もあり、それはそれで素晴らしいと思いますが、あくまでも対症療法だということを念頭に置く必要があります。
譲渡
殺処分を逃れた幼齢子猫のほとんどが「譲渡」されていますが、本来であれば幼齢(離乳前)子猫は譲渡対象にはなりません※。もちろんその中には自治体が譲渡可能な月齢まで育てて譲渡に至ったようなケースも含まれるでしょうが、多くは殺処分や収容中死亡を回避するため、地元のボランティアが引取ったのではないかと推測されます。
殺処分
幼齢子猫の殺処分率(31.4%)は犬よりは高いですが、猫(成熟個体)のそれ(46.0%)よりは低い値を示します。しかし前述のとおり幼齢子猫のほとんどがボランティアに引き渡されていると推測されるため、自治体による殺処分数が過小評価されている可能性があります。ボランティアによって手厚くケアされたとしても、すべての幼齢子猫が生き延びるとは限らないからです。
※環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号)では「子猫の譲渡に当たっては、特別の場合を除き、離乳前に譲渡しないよう努める」とされています。