殺処分数を減らすには(10) 犬(成熟個体)の対策 その1

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)から、令和4年度に全国の自治体で引取られた犬や猫についての統計をざっと見てきました。ここから、犬や猫の収容や殺処分をどうやって減らしていくかを考えてみます。

 

犬(成熟個体)

犬(成熟個体)については、課題は明白です。簡単に言えば次の3つです。

・返還率のさらなる向上

・野犬の個体数を減らす

・野犬の適切な譲渡

 

返還率のさらなる向上

日本においては「飼い主不明」として収容された犬の半数以上が、飼い主に返還されています。これは犬の登録制度が設けられている国や地域の共通の傾向です。そしてマイクロチップや迷子札等の個体識別措置を普及させることにより、返還率を限りなく100%に近づけることができます。米国の一部地域で行われているようなマイクロチップの無料装着サービスや、マイクロチップ装着に対するインセンティブ(登録料の減免など)も有効です。またマイクロチップだけではなく迷子札を装着しておけば、保護した人が直接飼い主に連絡することができるため、そもそも収容の必要がなくなります。もちろん、飼い主に対する逸走防止等の啓発も同時進行で行うべきです。

 

「野犬」という用語について

収容される犬のうち、飼い犬以外はいわゆる野良犬や放浪犬です。そういった犬を行政用語でざっくりと「野犬」と呼びます。この用語がいつから用いられているのか定かではありませんが、最初に用いられた公的文書は昭和26年3月31日付けの厚生事務次官通知「狂犬病予防施策の徹底方について」(厚生省発衛第60号)と考えられます。この通知によると「非合法飼育犬及び野犬」が狂犬病の温床となっていて、これを一掃すべきとしています。ちなみに「非合法飼育犬」とは「未登録又は未注射犬、けい留命令があったにもかかわらずけい留されていない犬」を指します。つまり「野犬」とは「非合法飼育犬」以外の野良犬や放浪犬のことと理解してよいでしょう。

 

野犬の収容数を減らすには

野犬の収容数を減らすには2つの方法があります。つまり「野犬を捕獲しない」か「野犬の個体数を減らす」かのどちらかです。前者は収容数を減らすには手っ取り早い方法ですが、要するに野犬を放置するわけですから、問題を先送りしているにすぎません。そのため悪手であることは言うまでもありません。野犬の個体数を減らすには地道に捕獲していくしかありませんが、捕獲した野犬をどうするのかという問題が常につきまといます。(続く)