殺処分数を減らすには(11) 犬(成熟個体)の対策 その2

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)を参考に、犬や猫の収容や殺処分をどうやって減らしていくかを考えています。

 

野犬の捕獲

「狂犬病予防法」第6条第1項の規定によると、次のどれかに該当する犬は狂犬病予防員(自治体職員の獣医師)が抑留しなければならないとされています。

 

・狂犬病予防法第4条第1項に基づく登録を受けていない犬

・狂犬病予防法第4条第3号の規定に反し、鑑札を付けていない犬

・狂犬病予防法第5条第1項に基づく狂犬病予防注射を受けていない犬

・狂犬病予防法第5条第3項の規定に反し、注射済票を着けていない犬

 

飼い犬を含めほとんどの犬はこのどれかに該当すると思いますので、放れている犬がいれば通常抑留の対象になります。万が一その犬に鑑札と注射済票が付いていた場合、もしくは登録や予防注射の義務がない90日齢以下の子犬の場合、狂犬病予防法の規定による「抑留」ではなく、動物愛護法の規定による「引取り」になります。

つまり野犬の捕獲は法的義務として定められていますから、自治体も堂々と捕獲できますし、逆に捕獲を怠れば不作為を問われる可能性があります。野犬の捕獲には捕獲檻を用いることが多いですが、特に緊急を要する場合にはチームで一定個所に追い込み捕獲するといったこともあります。もしくは吹き矢でケタミンなどの麻酔薬を打ち込むといった方法もあります。かつて経口麻酔薬をドッグフードに混入してそれを野犬に食べさせるといった捕獲を行っていた自治体もありますが、効果が不安定なうえ安全域が狭く(有効量と致死量が近い)、また食べ残しや嘔吐物で周辺環境を汚染する可能性もあるので、現在はあまり用いられないようです。

 

捕獲した野犬をどうするか

しかし野犬の捕獲には、捕獲した野犬をどうするのかという問題が常につきまといます。野犬の中には性格的に家庭動物に向かない個体もいます。そういった野犬は

 

・「譲渡不可」として殺処分する

・相応のスキルと飼養施設を有する人にのみ譲渡する

・相応のコストをかけて馴化してから譲渡する

・サンクチュアリで終生飼養する

 

のいずれかしかないと私は考えますが、多くの自治体は素人に野犬を譲渡し、もしくは「譲渡」と称して野犬を動物保護団体に押し付け、目先の殺処分数を減らすことに成功(もちろん皮肉です)しています。そのことが様々な問題を引き起こしています。(続く)