「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)を参考に、犬や猫の収容や殺処分をどうやって減らしていくかを考えています。
犬(幼齢個体)
離乳前の犬の収容数を減らす方法は、犬の予定外の繁殖を防止することに尽きます。つまり
飼い犬→繁殖を望まない場合、避妊去勢手術を徹底する
野犬→捕獲等により、繁殖可能な個体数を減らす
また、離乳前の子犬の世話には手がかかりますし、社会化の点からも離乳までは母犬のもとにいたほうがよいですから、離乳前の子犬を引取らないための工夫も必要です。
飼い犬の対策
飼い犬の予定外の繁殖は、飼い主が気を付ければ予防できます。つまり繁殖制限こそが対策のすべてということになります。物理的障壁によって交尾を防止するという繁殖制限のやり方もありますが、予期せぬ事態を防止するため、また動物福祉の観点から、そして災害時対策として、避妊去勢手術が推奨されます。
野犬の対策
一方、野犬の繁殖は常に予定外です。野犬の繁殖を防ぐには、野犬の数を減らすしかありません。そのためには、積極的な捕獲と捕獲後の野犬の処遇についての検討が必要なのは前述のとおりです。海外の一部地域ではCNVR(野犬を捕獲して避妊去勢手術と狂犬病ワクチン接種を施し捕獲場所に戻す)や、獣医療のリソースが不十分な地域においては捕獲したオス犬の精巣に薬剤を注射して不妊化するなどということも行われています。法的には日本でも実施可能だと私は考えますが、そもそも日本では捕獲した野犬をリターンするという発想がありませんし、社会的な合意が得られているとは言い難い現状があります。
離乳前の子犬を収容しない工夫
野犬の繁殖地が特定されていて繁殖状況の監視が可能であれば、子犬が離乳するまで待って保護することができます。しかし中には母犬が不在の状態で離乳前の子犬を保護し持ち込む人もいます。そういう場合は引取らざるを得ませんが、離乳前の子犬は猫よりも比較的育ちがよいので、感染症にさえ気を付ければ譲渡可能な月齢まで育てることは難しくはありませんし、人間に馴らしていくことも可能です。しかし私の経験上、野犬の子の中には幼いころから人間に育てられても、飼い犬と同等なまでに馴れない個体も見受けられます。仮説の域を出ませんが、それはおそらく遺伝上の問題で、人間を警戒する性格の犬が野外で生き延びて、それが遺伝的に伝えられていることを意味するのかもしれません。