殺処分数を減らすには(14) 猫(成熟個体)の対策 その1

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)を参考に、犬や猫の収容や殺処分をどうやって減らしていくかを考えています。

 

猫(成熟個体)

前述のとおり、猫(成熟個体)については次の点が特徴的です。

 

・飼い猫の引取りと所有者不明猫の引取りがほぼ同数である

・しかもそれぞれが必ずしも少ない数字ではない

・殺処分率が高い(約半数が殺処分)

 

そして猫(幼齢個体)の引取り数の多さと合わせて考えると、次のようなことが導き出されます。

 

・飼い猫を不用意に繁殖させてしまっている飼い主が多い(放し飼いを含む)

・相当数の所有者不明猫が引取り拒否されていて、それが野外繁殖の温床になっている

・殺処分されている猫のほとんどが、人馴れしていない野良猫であると考えられる

 

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 

飼い猫の予定外の繁殖

「予定外の繁殖」を理由に、飼い主から離乳前の猫の引取り依頼があった場合、通常離乳まで待ってもらいます。そして同時進行で、新しい飼い主を自力で見つける努力をしてもらいます。ですので、飼い猫の引取りの多くは離乳後の個体(成熟個体)となります。

飼い猫の予定外の繁殖の原因は、ほとんどの場合飼い主の「無知と無理解」です。「予定外の繁殖」を理由に子猫の引取りを依頼する飼い主にはこのような特徴があります。

 

・猫の繁殖力を甘く見ている

・親子やきょうだい同士で繁殖しないと思っている

・避妊去勢手術の必要性を理解していない、もしくは避妊去勢手術を煩わしく思っている

・そもそも飼い猫を動物病院に連れていくという発想がない

 

そして「かわいそうだから野良猫に餌をあげていたら居ついてしまった」「かわいそうだから野良猫を家に入れたら増えてしまった」ということがほとんどです。つまり猫の飼育に必要な知識を持たないまま安易に猫を飼い始め、繁殖制限の必要性も知らないままなんとなく猫が増えてしまったというケースが多いのです。飼い主教育の必要性については今さら言うまでもありませんが、加えて地域住民や福祉関係者などによる見守りにより、異変を感じたら速やかに自治体の担当者に情報提供できるようなシステムも必要です。そして担当者も飼い主に「指導」を繰り返すのではなく、実効性がある対応が必要です。そのためには避妊去勢手術に特化しかつ機動性が高いいわゆる「スペイクリニック」に速やかにつなぐことができる体制が必要であると私は考えています。