殺処分数を減らすには(16) 猫(成熟個体)の対策 その3

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)を参考に、犬や猫の収容や殺処分をどうやって減らしていくかを考えています。

 

野良猫への「エサやり禁止」は有効か

私は飼い猫の登録と完全屋内飼育を義務付けるべきと考えていますが、その場合敷地内で野良猫に餌付けしているような「半野良」の猫の扱いが問題になります。前述のとおり、

 

・屋内に入れて「飼い猫」として飼育する

・そのまま「野良猫」として管理する

・「飼い猫」として自治体に引取りを依頼する

 

のいずれかの対応が望ましいと考えられます。しかしそういう相談を受けたとき「エサやりを止めて敷地内から追い出してください」と指導する担当者が大半だと思います。これは典型的な「問題の先送り」です。エサやりを止めたからといって、野良猫が消えてなくなるわけではなく、他の場所で食料を探すだけだからです。

 

必要なエサやりもある

一部の自治体が、野良猫への「むやみな」エサやりを禁止する条例を制定していて物議を醸しています。その基本理念は「むやみな」エサやりが野良猫の栄養状態を良好にし、繁殖を促進するというところから来ています。つまりエサやりを禁止して野良猫の栄養状態を悪化させれば、繁殖も減るだろうというわけです。考え方は必ずしも間違っていませんが、なんだか変な話ですよね。「兵糧攻め」のようなやり方に違和感を感じますし、そもそも野良猫の繁殖を防止したければ、TNRを推進することが近道だからです。

また「むやみな」という語の曖昧さも、この問題を複雑化させています。もちろん無秩序なエサやりは禁止すべきですが、必要なエサやりもあるはずです。例えば、

 

・TNRの捕獲目的で餌付けするためのエサやり

・TNR済みで適切に管理されている野良猫へのエサやり

・衰弱個体などへの緊急避難的なエサやり(これは自治体に通報する案件だとは思いますが)

 

などは、そもそも「むやみな」エサやりに含まれない、必要なエサやりです。それをあいまいに定義するのではなく必要なエサやりをきちんと定義し(もちろん「地域猫活動」を含めたTNR活動もきちんと定義する)、それ以外のエサやりは禁止する必要があるのではないかと私は考えます。なぜ私がこんなことを言うかというと、エサやり禁止条例のせいで「必要なエサやり」を行っている人が非難されたり、逆に「むやみな」エサやりを行っている人が「地域猫活動」だと居直ったりするケースが散見されるからです。