殺処分数を減らすには(17) 猫(成熟個体)の対策 その4

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)を参考に、犬や猫の収容や殺処分をどうやって減らしていくかを考えています。

 

野良猫の「引取り拒否」

前回までは飼い猫や「半野良」猫の収容防止策について考えてきましたが、「所有者不明の猫」もそれと同じくらいの数収容されています。そしてその多くが、飼い主のいない「野良猫」です。

かつて「所有者不明の猫」については自治体が引取り、譲渡や殺処分を行っていました。しかし野良猫の殺処分の多さが問題となり、環境省が「殺処分ゼロ」を打ち出したこともあり、動物愛護法を改正し「引取り拒否」条項を設けました。従前から一部の自治体によって行われていた野良猫の引取り拒否に、法的なお墨付きを与えたわけです。それは野良猫を野に置くことを意味するのですが、それに伴い当然必要になる、野良猫を管理していくための法整備は行われませんでした。心ある自治体は自主的に、もしくは民間と協働して野良猫の管理を実施していますが、ウチの自治体も含め多くの自治体は、法的根拠がないことにあぐらをかき、放置もしくは民間に丸投げしています。監督庁である環境省も、「地域の事情」を盾に野良猫の管理を自治体に丸投げしています。努力義務でもよいので、「野良猫の管理は都道府県等が行うよう努める」と動物愛護法に一文入れていただくだけでもずいぶん違うのになあと、私などは思うのです。

何のビジョンもなく単に野良猫を放置することはきわめて悪手であると、私は考えています。目先の「殺処分ゼロ」を演出し、根本的な問題から目をそらし問題を先送りするための二大ツールが「野良猫の引取り拒否」と「野犬の無責任譲渡」といえます。

 

野良猫を減らす方法

飼い猫の逸走防止やTNR活動の推進など、野良猫が増えないための手を打った上で所有者不明猫の引取りを拒否するのであれば筋が通っていますが、今のやり方は単なる野良猫の放置であり、目先の殺処分数を減らすためのミエミエの姑息な手段にすぎません。野良猫を野に置いたままにして個体数を減らしたければ、少なくとも

 

・飼い猫の完全屋内飼育の義務付け(可能であれば登録とマイクロチップも)

・「地域猫活動」を含めた、TNR活動の法的定義(条例で定めている自治体もあります)

・野良猫のTNR手術を公的機関で実施する、もしくは実施する動物病院への公的助成

 

くらいの法整備は必要でしょう。それがいやなら、所有者不明猫の引取り拒否は止めるべきです。猫の殺処分数は大幅に増えるでしょうが、自治体が楽をして殺処分数も減らせるなどという虫のいい話はありません。その代償は自治体の代わりに野良猫を保護しているボランティアと、過酷な屋外生活を強いられている野良猫たちが支払っていることを忘れてはなりません。