殺処分数を減らすには(21) 猫(幼齢個体)の対策 その2

「令和5年度動物愛護管理行政事務提要」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)を参考に、犬や猫の収容や殺処分をどうやって減らしていくかを考えています。

 

野良猫を増やさないための方策

自治体に収容される幼齢子猫の多くが「野良猫の子」であり、収容を減らすには野良猫の個体数や繁殖数を減らすしかないと述べましたが、それと並行して野良猫を増やさないための方策も必要です。具体的には「予期せぬ繁殖」を防止するための避妊去勢手術の普及や逸走防止などになりますが、このあたりは飼い猫の項ですでに述べていますので割愛します。

 

生まれてしまった子猫の処遇問題

また、すでに生まれてしまい住民によって持ち込まれた離乳前子猫の処遇についても考えなければなりません。ここでは「離乳前子猫の保護」と「ミルクボランティア」について考えていきたいと思います。

 

はぐれた子猫をどうするべきか

野外で離乳前の子猫を見つけたらどうするか、次の3つが考えられます。

 

・そのまま放置し、母猫が戻るのを待つ(安全が確認された場合)

・「負傷動物」として自治体に通報し、動物管理機関に持ち込むか、職員が到着するのを待つ

・自分の責任で保護する(動物病院に連絡し、指示を仰ぐことを推奨)

 

そのまま放置する

母猫が離乳前の子猫を置いたまま出かけることは珍しいことではありません。多くの場合、数時間後には母猫が帰ってきます。もちろん子猫が交通量の多い路上など危険な場所にいる場合や、子猫がぐったりして鳴き声が出ないような場合(母猫が見つけられない可能性がある)などは即保護する必要がありますが、ほとんどの場合保護は必要ありません。例えば米国のTNR推進団体Alley Cat Alliesは、離乳前の子猫を見つけても8週齢まではそのままにしておくことを奨励する“Leave Them Be”(https://www.alleycat.org/take-action/leave-them-be/)キャンペーンを行っています。

 

日本において「放置」は有効か

たしかに離乳前の子猫は安全が確保される限り「放置する」ことが子猫たちにとって最も良い選択ですが、自治体が野良猫の引取りを原則拒否している現在の日本において、これが必ずしも良い方法とは言い切れません。「地域猫活動」やTNR活動などによりある程度野良猫が管理されているような地域でたまたま子猫が生まれたというのであれば、8週間後に子猫を保護し、母猫に避妊手術を施すという対応も可能でしょうが、多くの場合単なる放置で終わってしまうことは火を見るよりも明らかです。日本においては離乳前の子猫は放置せず、保護していかざるを得ないのではないかと私は考えています。そこでミルクボランティアの役割が重要になってきます。