殺処分数を減らすには(25) まとめ その2

収容しないための方策

前回、日本の犬猫の収容状況から導き出した、殺処分を減らすための方法について次のとおりまとめました。

 

・飼い犬の繁殖制限

・飼い犬の返還率のさらなる向上

・野犬の個体数を減らす

・野犬の適切な譲渡

・飼い猫の繁殖制限

・飼い猫が野良猫化しないための方策

・野良猫の個体数を減らす

・ミルクボランティアの活用

 

シェルターメディスンを学んだ方にはおわかりでしょうが、これらはすなわち、シェルターに動物を入れないための一般的な方策ばかりです。言い換えれば、当たり前のことを愚直に実行していけばよいだけだということです。それができていないから、いつまでも殺処分が続くのです。

 

「殺処分ゼロ」よりも「収容ゼロ」を

最初にも申したとおり、「殺処分ゼロ」を達成することはきわめて簡単です。殺処分しなければよいのです。しかしただ単に殺処分だけを止めてしまったら何が起こるか、考えればすぐにわかることです。殺処分対象になる犬や猫の数を減らさなければ、何の解決にもなりません。シェルターメディスンは動物福祉を担保するための獣医療ですが、「殺処分ゼロ」を目指す獣医療ではありません。もちろん「殺処分ゼロ」という理想を目指してはいますが、それを目標とはしていません。動物の「飼い殺し」によって成り立つような「殺処分ゼロ」には、何の意味もないからです。受入れ拒否することなく収容数を減らすことができれば殺処分数も減らせるはずだというのが、シェルターメディスンの考え方です。

米国のシェルターメディスンの教科書 “Shelter Medicine for Veterinarians and Staff, Second Edition”(2013)によると、動物はシェルターに入らないことが「最良のシナリオ」としながら、そのためのシェルター事業として次をあげています。

 

・飼い主がペットを飼い続けることができるためのサポート

・利用しやすく低廉な避妊去勢手術サービスの提供

・TNRやRTFによる野良猫の個体数管理

 

そしてシェルターに収容せざるを得なかった動物については、速やかに「返還」「譲渡」「(譲渡を前提とした)移送」といった「ライブリリース」を目指すとしています。「動物をシェルターに入れない」ことと「ライブリリース」は車の両輪のようなもので、どちらかだけでは機能しません。しかし「シェルターに動物を入れない」ための3つの事業は民間でも実施可能です。とかく「ライブリリース」に注目が集まり、そこに支援も集まりやすい傾向がありますが、そこに至らないための愚直な取組みにも光を当てていただきたいと願い、この連載を終わりにしたいと思います。(おわり)