利用しやすく低廉な、犬猫の避妊去勢手術サービス(米国でいうところの「避妊去勢プログラム」)を提供するためのいわゆる「スペイクリニック」について考えています。
固定式のスペイクリニック
日本においても、避妊去勢手術に特化した「スペイクリニック」と呼ばれる動物病院が増えています。なぜあえて「固定式」と言うのか、それはMASH(仮設手術室)やMSNC(移動手術室)といった移動式の形態と区別するためです。
スペイクリニックの特徴
全てではありませんが、スペイクリニックには次のような特徴があります。
・手術料金が相場より大幅に安価である(そのためのクリニックですから)
・複数の手術台がある(一度に多数の手術に対応するため)
・手術を毎日行っているとは限らない(週1回のクリニックも珍しくない)
・高度医療機器を有しない(その分安価にサービスを提供できる)
スペイクリニックの利点
固定式のスペイクリニックの最大の利点は、コンビニエンスストアではありませんが「そこにある安心感」です。同じ場所で定期的に手術を受け入れるスペイクリニックは、地元にとってありがたい存在です。また移動式と異なり、機器や術者の移動時間や設営の手間が省けるため、手術そのものに専念でき多数の手術が可能です。さらに術後のフォローにも速やかに対応できます。
スペイクリニックの欠点
通常の動物病院よりは安価とはいえ、固定式のスペイクリニックを開設するにはそれ相応の初期費用がかかります。また持続的な経営のためには一定の需要が必要で、ニーズを事前に把握しておくことが重要です。ASPCA(米国動物虐待防止協会)によると、スペイクリニックが経営的に成り立つには、半径60マイル(約100km)の範囲内に25万人以上の人口が必要とされています。人口がそれを下回る場合、送迎サービスや出張サービス等が必要になるかもしれません。
獣医師不足の問題
米国では獣医師が超売り手市場で、スペイクリニックに限らず、動物保護に従事する獣医師の人手不足が深刻化しているそうです。日本においても、動物保護団体がスペイクリニックを開設したいが執刀医が見つからないという話をよく聞きます。ウチの自治体も人材不足で、県外からのMASHやMSNCに頼っている現状があります。スペイクリニックは必ずしも金銭的に恵まれている職場ではなく、獣医師やその他スタッフの熱意や善意で成り立っています。私はスペイクリニックは公営であるべきという持論を持っていますが、そうでないにしても、スペイクリニックを重要な社会資本と位置づけ、社会全体で支えていく必要があるのではないかと思います。