利用しやすく低廉な、犬猫の避妊去勢手術サービス(米国でいうところの「避妊去勢プログラム」)を提供するためのいわゆる「スペイクリニック」について考えています。
そもそも「避妊去勢プログラム」とは何か
ここまで何の説明もなく「避妊去勢プログラム」という言葉を使ってきましたが、“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”(シェルター獣医師会の避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016)は、「避妊去勢プログラム」をこう説明しています。
Spay-neuter programs represent a crucial component of community efforts to reduce the sheltering and euthanasia of unwanted and unowned cats and dogs. Designed to facilitate access to spay-neuter services among targeted populations of animals, spay-neuter programs prevent reproduction, reducing birthrates and subsequent overpopulation. By targeting underserved populations for which spay-neuter services are unlikely to be available or accessible, these programs provide surgical sterilization to animals that are most at risk for contributing to shelter impoundment and euthanasia. In the United States, these typically include pets from low-income households and community cats (ie, unowned free-roaming cats, including unsocialized feral cats and socialized stray cats).
避妊去勢プログラムは、不要とされた、もしくは飼い主がいない犬や猫のシェルターへの収容や安楽殺を減らすための地域社会の取り組みの重要な要素です。避妊去勢プログラムは、対象となる動物の集団が避妊去勢手術を受けやすくなるように設計されており、繁殖を防ぐことで出生率を低下させ、その後の個体数増加を抑制します。これらのプログラムでは、避妊去勢手術のサービスが受けられない、もしくは十分にサービスを受けられない個体群を対象に、シェルターへの収容や安楽殺の原因となる危険性が最も高い動物に外科的な不妊手術を行います。米国では、低所得世帯のペットや野良猫(人馴れしていない野猫や人馴れした迷い猫を含む、飼い主のいない自由生活の猫)などが一般的です。
「避妊去勢プログラム」は必ずしも一般の飼い主に対して門戸を閉ざすものではありませんが、過剰繁殖のリスクが高い「低所得者のペット」や「野良猫」を主な対象としているわけです。つまり「避妊去勢プログラム」は一種の慈善事業と位置付けられ、獣医師やボランティアをはじめ、さまざまな人の寄付や善意で成り立っているわけです。そして「避妊去勢プログラム」を実施する主な場こそが「スペイクリニック」です。私は「低所得者のペット」や「野良猫」の避妊去勢手術は福祉事業や環境保全事業として公費で実施すべきと考えていますが、それが実現するのを待つ余裕はありません。しつこいようですが、スペイクリニックを重要な社会資本として社会全体で支えていく機運を醸成することが重要であると私は考えています。(おわり)