Campbellら(2024)の“Impact of early socialisation in foster care on kitten behaviour”(預かりボランティアによる早期社会化が子猫の行動に与える影響)(https://doi.org/10.1016/j.applanim.2024.106306)から、幼齢子猫の早期社会化について見ています。
結果<続き>
多変量解析
この研究では各要素の関連性について、多変量解析により分析されました。
子猫の要因
行動上の懸念があると報告された子猫(平均425g)は、医療上の懸念が報告された子猫(平均523g)や懸念がない子猫(平均516g)よりも体重が低く、収容された週齢が比較的若いことが示唆されました。
なお、子猫が母猫の世話を受けているかどうか、子猫が一匹だけであるかどうか、預かりボランティアのもとで過ごした日数、子猫を定期的に世話していた成人の数と、研究に含まれる結果との間には関連はありませんでした。また性別と結果の間にも有意な関連は見つかりませんでした。その中でも有意差がみられたのは次の項目です。
・人工乳で育てられた離乳前の子猫はそうでない子猫と比べ、「世話人が部屋に入ってきたとき」に「好ましい反応」を示す確率が6.6倍でした。これは幼いころから人間に育てられた子猫は世話人により懐きやすい可能性を示唆しています。
・皮膚糸状菌症の治療を受けた子猫はそうでない子猫と比べ、「新しい物」に対して「好ましくない反応」を示す確率が9.1倍でした。これは治療行為が「物」に対する反応に影響を与えている可能性を示唆しています。
・ほとんどの時間を家の「交流エリア」で過ごした子猫はそうでない子猫と比べ、「世話人が部屋に入ってきたとき」に「好ましい反応」を示す確率が2.2倍、「新しい物」に対して「好ましい反応」を示す確率が3.3倍、「遊び」の際に「好ましい反応」を示す確率が3.0倍でした。やはり子猫は他者との関わりを持つことができる場所に置く方がよいようです。
・単独で過ごす時間がまったくない子猫は、単独で過ごす時間が多少ある子猫と比べて「遊び」の際に「好ましくない反応」を示す確率が1.1倍、単独で長い時間を過ごす子猫と比べて「遊び」の際に「好ましい反応」を示す確率が 4.1倍でした。「遊び」に関しては、他者との一定の関わりが必要なようです。
・「おおむね静か」な環境で飼われていた子猫は、5つの状況に対して全体的に「好ましい反応」を示す確率が「通常の生活音」の子猫と比べて1.9 倍、「騒がしい」環境の子猫と比べて1.8倍でした。やはり飼育環境は静かなほうがよいようです。