Campbellら(2024)の“Impact of early socialisation in foster care on kitten behaviour”(預かりボランティアによる早期社会化が子猫の行動に与える影響)(https://doi.org/10.1016/j.applanim.2024.106306)から、幼齢子猫の早期社会化について見ています。
考察
総評
この研究はアニマルシェルターから預かりボランティアに預けられた幼齢子猫を対象としましたが、ほとんどの子猫がよく育ち、死亡率も極めて低く、預かりボランティアに育てられた後に譲渡に至っています。また子猫に関する健康上の懸念もあまり報告されませんでした。
子猫の社会化と関連していた要因
この研究により導き出された、預かりボランティア宅における子猫の社会化に影響を与えていると考えられる要因は「子猫の飼育場所」と「子供との触れ合い」でした。
子猫の飼育場所
家庭内の「交流エリア」(屋内で放し飼い、もしくはリビングルームで飼育)でほとんどの時間を過ごした子猫は、「非交流エリア」(空き部屋、ガレージ、洗濯室など)で飼育されていた子猫よりも、「世話人が部屋に入った時」「新しい物との出会い」「遊び」の際に「好ましい反応」を示す傾向を示しました。これは子猫を預かりボランティア宅の「中心部」で飼育することにメリットがある可能性を示しています。
単独で過ごす時間
しかし一方、子猫が同腹仔や人間から離れて、単独で過ごす時間も重要であると考えられました。単独で過ごす時間がなかった子猫は、単独で過ごす時間が多少あった子猫よりも、「遊び」の際に「好ましくない」反応を示す傾向がありました。Bradshaw(1998)※1によると、通常野外においては、子猫が迷子になっても声を出さない限り、母親が子猫を回収することはありません。預かりボランティア宅においてはたとえ子猫が声を出さなくても構ってもらえるため、子猫が単独で自由に過ごす時間はそれほど多くないと考えられます。また子猫は睡眠欲求が高いことが知られていて、単独で過ごす時間がまったくないと睡眠が妨げられ「好ましくない」反応につながる可能性があります。
しかしこの研究では、単独で長い時間を過ごしていた子猫は、単独で過ごす時間がなかった子猫よりも「遊び」の際に「好ましくない」反応を示す傾向が示され、単独で過ごす時間が長すぎることも問題となる可能性があります。Schwartz (2003)※2は子猫が単独で過ごす時間が長いと、成猫になってからの分離不安の原因になりえると指摘していますし、McCune (1995)※3は人間との良い交流が子猫の社会化の重要な要素であると述べています。
預かりボランティアのもとで子猫が単独で過ごす時間を適度に設けることにより、子猫の「遊び」に対する反応を改善することができれば、シェルターに戻された際に新しい飼い主候補と遊ぶ可能性が高くなり、結果的に譲渡につながりやすくなるかもしれません。
※1 Bradshaw, 1998 J. Bradshaw
The Behavior of the Domestic Cat
CABI Publishing (1998)
※2 Schwartz, 2003 S. Schwartz
Separation anxiety syndrome in dogs and cats
J. Am. Vet. Med. Assoc., 222 (11) (2003), pp. 1526-1532,
10.2460/javma.2003.222.1526
※3 McCune, 1995 S. McCune
The impact of paternity and early socialisation on the development of cats’ behaviour to people and novel objects
Appl. Anim. Behav. Sci., 45 (1) (1995), pp. 109-124, 10.1016/0168-1591(95)00603-P