Campbellら(2024)の“Impact of early socialisation in foster care on kitten behaviour”(預かりボランティアによる早期社会化が子猫の行動に与える影響)(https://doi.org/10.1016/j.applanim.2024.106306)から、幼齢子猫の早期社会化について見ています。
考察<続き>
預かりボランティア宅の「騒がしさ」
預かりボランティア宅の「騒がしさ」も「5つの状況」、つまり「(世話人が)部屋に入る」「給餌」「新しい物」「新しい人」「遊び」に対する子猫の反応に関連していました。静かな場所で飼育されていた子猫は、通常の生活音や騒がしい場所で飼育されていた子猫よりも、「5つの状況」に対して「好ましい」反応を示す傾向がみられました。おそらくこれは子猫のほとんどが野良猫で、騒がしい家庭環境に慣れていなかったことによるものと考えられます。またFayとPopper (1994)※1によると、猫の可聴域は0.125~60 kHzと哺乳類の中でも最も広く、Eaganら(2021)※2は猫が大音量にさらされると回避行動や恐怖行動が増加すると報告しています。またQuimbyら(2021)※3は、子猫の「重要な社会化期」には、穏やかに段階的に騒音にさらすことを推奨しています。これらのことから、預かりボランティア宅が「通常の生活音」や「騒がしい」場合、最初の数日間は子猫を空き部屋等静かな場所に置き、慣れさせてからリビングに移したりや屋内放し飼いにすることにより、騒がしさによる子猫への悪影響を軽減できる可能性があります。
預かりボランティア宅で過ごした期間
この研究では子猫の収容時週齢の推定に収容時体重を用いていますが、収容時体重がきわめて低かった(つまり収容時にきわめて幼齢であった)子猫については多少の影響が認められたものの、収容時体重は当初予想していたよりも他の結果に影響を与えませんでした。また子猫が預かりボランティア宅で過ごした期間は、他の結果との関連が認められませんでした。この研究からは、子猫を最長8~9週間里親に預けている限りにおいては、その期間の長さが子猫に悪影響を与えることがないことが示唆されています。Gouveiaら(2011)※4は、シェルターに収容されている猫は滞在期間が長くなるにつれて結果が悪くなると指摘しているため、この論文では子猫を預かりボランティアに預けることは動物福祉上の利点があるとしています。
※1 Fay and Popper, 1994 R.R. Fay, A.N. Popper
Comparative Hearing - Mammals
Springer-Verlag (1994)
※2 Eagan et al., 2021 B. Eagan, E. Gordon, D. Fraser
The effect of animal shelter sound on cat behaviour and welfare
Anim. Welf., 30 (4) (2021), pp. 431-440, 10.7120/09627286.30.4.006
※3 Quimby et al., 2021 J. Quimby, S. Gowland, H.C. Carney, T. DePorter, P. Plummer, J. Westropp
2021 AAHA/AAFP feline life stage guidelines
J. Feline Med. Surg., 23 (3) (2021), pp. 211-233, 10.1177/1098612×21993657
※4 Gouveia et al., 2011
K. Gouveia, A. Magalhães, L. de Sousa The behaviour of domestic cats in a shelter: residence time, density and sex ratio
Appl. Anim. Behav. Sci., 130 (1) (2011), pp. 53-59, 10.1016/j.applanim.2010.12.009