預かりボランティアによる幼齢子猫の社会化 その13

Campbellら(2024)の“Impact of early socialisation in foster care on kitten behaviour”(預かりボランティアによる早期社会化が子猫の行動に与える影響)(https://doi.org/10.1016/j.applanim.2024.106306)から、幼齢子猫の早期社会化について見ています。

 

考察<続き>

 

離乳前子猫

人工乳で育てられた(離乳前に預かりボランティアに預けられた)子猫は、そうでない子猫よりも、世話人が部屋に入ってきたことに対して「好ましい」反応を示す傾向がありました。この結果は「重要な社会化期」に人間が子猫と積極的に触れ合うことで友好度が高まるという、McCune(1995)の研究結果を裏付けています。ただし「5つの状況」の他の状況、すなわち「授乳」「新しい物」「新しい人」「遊び」に対する反応には有意差がなかったことから、この結果は「世話人の存在」と「授乳」、そして「授乳で得られる満足感」が結びつくことによる学習効果が示された可能性があります。またこの行動が子猫の将来的な社交性を予想するものであるか否かは不明です。

少なくとも、預かりボランティアに預けられた離乳前子猫は死亡率が低く、罹患率が比較的低く、行動の結果も良好であり、全体的によい結果が得られていることを考えると、離乳前子猫を預けるいわゆる「ミルクボランティア」には投資の価値があるとこの論文は結論付けています。

 

シングルトン

シングルトン(単独で保護された子猫)であるか否かは、「5つの状況」への反応のいずれにおいても関連はありませんでした。O'Hanleyら (2021)※は、離乳前子猫やシングルトンであることと、成猫後の攻撃性には関連がないと報告していますが、これを裏付ける結果といえます。この研究ではシングルトンと母猫に育てられた子猫との比較も行われましたが、有意差は認められませんでした。

O'Hanleyらの研究は「攻撃性」に着目していましたが、この研究においては攻撃的反応と恐怖反応をまとめて「好ましくない」反応として集計されました。攻撃的反応を示す子猫がごく少数であったことを考えると、シングルトンとそうでない子猫との間には攻撃性だけではなく恐怖反応にも差がないといえるかもしれません。

この研究では離乳前子猫やシングルトンが預かりボランティアのもとで育てられることが、子猫の行動や健康に影響を及ぼすものではないことが示されました。それは預かりボランティア制度に対する安心感につながります。しかし子猫の幼少期の行動が、成熟後の行動にどのように反映されるかを理解するには、さらなる研究が必要です。

 

※O’Hanley et al., 2021 K.A. O’Hanley, D.L. Pearl, L. Niel

Risk factors for aggression in adult cats that were fostered through a shelter program as kittens

Appl. Anim. Behav. Sci., 236 (2021), Article 105251, 10.1016/j.applanim.2021.105251