預かりボランティアによる幼齢子猫の社会化 その15

Campbellら(2024)の“Impact of early socialisation in foster care on kitten behaviour”(預かりボランティアによる早期社会化が子猫の行動に与える影響)(https://doi.org/10.1016/j.applanim.2024.106306)から、幼齢子猫の早期社会化について見ています。

 

考察<続き>

 

子供との接触

この研究は、預かりボランティア宅において子猫が子供と接触した頻度と、「世話人が部屋に入る」「新しい人」「遊び」に対する子猫の反応との関係について、多少複雑な結果を示しています。つまり子供と全く接触がなかった子猫と比べ、「時々(infrequent)」及び「ずっと(continual)」子供と接触していた子猫については「好ましい」反応を示す傾向があったのに対し、「頻繁に(frequent)」子供と接触していた子猫は逆に「好ましくない」反応を示す傾向がありました。そこにはアンケートに回答した預かりボランティアが「時々」「頻繁に」「ずっと」という語をどう解釈したかという問題もあるため、さらなる調査が必要ではありますが、子供とのふれあいが子猫の人間への好意的な反応を育んでいる可能性があるといえるでしょう。この調査結果は、たとえ短時間であっても、子猫は子供とのふれあいで満足感を得られることを示していますし、子供がずっとそばにいる状況であっても、子猫は自分の意志で休憩したり、同腹仔と遊んだりすることができていると推測されます。

 

大人との接触

Collard(1967)は※一人の大人のみと接触した5週齢の子猫は、5人の大人と接触した子猫よりも、見知らぬ人に対する恐怖心を強く示しているが、より多くの遊び行動を示したと報告していますが、この研究では、猫に定期的に接触していた大人の数はいかなる結果とも関連していませんでした。ただしこの研究においては、子猫と大人とのふれあいの内容やその長さについて調査されていないため、その点についてはさらなる調査が必要と考えられます。

 

医学的な懸念

子猫についての医学的懸念の有無については、いかなる結果とも関連していませんでした。これは子猫の医学的懸念が、少なくともこの研究で示された預かりボランティア制度に関する要因によるものではないことを示しています。この論文では子猫の免疫関連の要因、例えば母猫が有していた免疫(つまり初乳の内容)、ワクチンの接種状況、初乳摂取の有無やタイミングなどが子猫の医学的懸念に影響を及ぼしているのではないかと推測されています。

 

※ Collard, 1967 R.R. Collard

Fear of strangers and play behavior in kittens with varied social experience

Child Dev., 38 (3) (1967), pp. 877-891, 10.2307/1127265