治療スペクトラム(2) 「治療スペクトラム」の考え方

飼い主がペットを飼い続けることができるためのサポート手法のひとつとして注目されている「治療スペクトラム(Spectrum of Care)」について私なりにまとめてみましたが、いまいちピンとこないので、ASPCA(米国動物虐待防止協会)の取り組みから見ていきましょう。

 

「治療法はひとつではない」

ASPCAはASPCA動物病院を通じて、獣医療をより利用しやすく、手頃な価格にすることに取り組んでいます。手頃な価格の獣医療は、必ずしも「劣った」獣医療とは限りません。なぜなら、最も技術的に進歩した高価な選択肢が、より安価な治療法よりも必ずしも効果的であるとは限らないからです。ここではASPCAのウェブ記事“A Spectrum of Care is the Antidote to One Dog’s Mysterious Illness”(https://www.aspcapro.org/resource/spectrum-care-antidote-one-dogs-mysterious-illness)に掲載されている、スタッフのコメントをご紹介します。ASPCA動物病院副院長のDr. Camille DeClementiはこういいます。

 

“There are many ways to treat an illness, not just one,” 

「病気の治療方法はひとつだけではなく、たくさんあります」

 

“We want to influence other veterinary professionals to provide less intense care, which provides the same outcome but is not as costly,”

「私たちは、他の獣医師たちに、同じ結果をもたらしながらもそれほど費用がかからない、それほど集中的ではない治療を提供するよう働きかけたいのです。」

 

「治療スペクトラム」の考え方

認定獣医看護師で獣医療サポートチームリーダーのMorgan Lucasはこういいます。

 

“A spectrum should range from basic, lower-cost options that offer a good outcome, to more advanced, higher-cost options that also offer a good outcome,”  

「治療の範囲は、良い結果をもたらす基本的な低コストの選択肢から、良い結果をもたらすより高度で高コストの選択肢まで多岐にわたるべきです」

 

 “The care options should have an achievable goal that is influenced by the owner’s goals and the resources available to both the owner and the veterinary team,” 

「治療の選択肢には、飼い主の目標と、飼い主と獣医療チームの両方が利用できるリソースによって左右される、達成可能な目標が必要です。」

 

そしてDr. DeClementiはこういいます。

 

“Shifting the perception that there is only one ‘best’ option changes the focus to providing an array of options based on clinical research, scientific evidence, and the needs of the individual animal and their family,” 

「『最善』の選択肢は1つしかないという認識を変えることで、臨床研究、科学的エビデンス、個々の動物とその家族のニーズに基づいたさまざまな選択肢を提供することに重点が変わります」