アニマルシェルターの衛生対策(4) 洗剤や消毒剤の選択

アニマルシェルターはさまざまな出自の動物が集まる場です。そのため、感染症蔓延のリスクが非常に高い場所であるといえます。感染症簿蔓延防止のためには、施設の衛生管理が重要です。シェルターの衛生管理について、ASPCA(米国動物虐待防止協会)のホームページ“Sanitation for Disease Prevention in Animal Shelters”(https://www.aspcapro.org/resource/sanitation-disease-prevention-animal-shelters)を参考に見ています。

 

Cleaning and Disinfecting Products(洗浄剤および消毒剤)

衛生対策(洗浄および消毒)に用いる薬剤を選択する際には、次のことを考慮する必要があります。

 

・Detergent activity(洗浄活性:汚れがよく落ちるか否か)

・Spectrum of disinfecting activity (e.g., effective against unenveloped viruses)(消毒活性の範囲(例:エンベロープを持たないウイルスに対して有効か否か))

・Storage, dilution, and application requirements(保管、希釈、適用要件:使い勝手がよいか否か)

・Required contact time for effectiveness(効果を上げるために必要な接触時間)

・Human and animal safety(人間や動物への安全性)

・Environmental impacts(環境への影響)

・Cost(コスト)

 

この中でも重要な事項について、少々補足しておきます。

 

エンベロープの有無

ウイルスの中には、エンベロープという脂質の膜を持つものと持たないものがあります。エンベロープはアルコールに溶けるので、インフルエンザウイルスやコロナウイルス、レトロウイルス(FIVやFeLVなど)といったエンベロープを持つウイルスに対してはアルコールが有効です。しかしシェルターでしばしば問題になる、犬パルボウイルスや猫汎白血球減少症ウイルス、カリシウイルス(猫かぜの原因ウイルスの一種)といったウイルスはエンベロープを持っていないので、アルコールが効きにくいことに注意する必要があります。つまりシェルターで使用する消毒剤を選ぶ際には「エンベロープを持たないウイルスにも有効」であることを確認する必要があります。ラベルに明記されていない場合は、メーカーに問い合わせるとよいでしょう。

 

洗浄成分を含む消毒剤

消毒剤の中には、加速化過酸化水素のように洗浄成分を含んでいるものがあります。このような消毒剤は洗浄剤としても消毒剤としても使うことができる優れものです。