アニマルシェルターの衛生対策(13) 個人防護具(PPE)

アニマルシェルターはさまざまな出自の動物が集まる場です。そのため、感染症蔓延のリスクが非常に高い場所であるといえます。感染症簿蔓延防止のためには、施設の衛生管理が重要です。シェルターの衛生管理について、ASPCA(米国動物虐待防止協会)のホームページ“Sanitation for Disease Prevention in Animal Shelters”(https://www.aspcapro.org/resource/sanitation-disease-prevention-animal-shelters)を参考に見ています。

 

Personal Protective Equipment (PPE)(個人防護具)

「個人防護具」というと、それを身に付ける人への感染防止というイメージがありますが、もちろんそれもあるのですが、シェルターにおけるPPEには「病原体の蔓延防止」という重要な意味があります。シェルターにはさまざまな出自の動物が集まります。その中には感染症を発症している動物がいるかもしれませんし、見た目が健康であっても病原体に感染していて、病原体を排出している動物もいるかもしれません。PPEを身につけずにそういった動物の世話を行うと、病原体がその人に付着または感染して、他の動物や人間に広げるおそれがあります。それを防ぐために作業を行う人は適切なPPEを着用し、まず自らの体を病原体から守らなければなりません。

 

PPEの適切な着用

シェルターにおいて犬舎等の洗浄や消毒を行う場合、どのようなPPEを着用すべきか、ASV(シェルター獣医師会)のガイドラインでは次のように示されています。

 

・健康な動物のケア

健康な動物、もしくは非感染性疾患の動物のケアの際には使い捨て手袋を着用するか、作業ごとに手洗い及び手指消毒を行います。必要に応じてガウンやスクラブなどの上着を着用します。汚れた囲いに入る際にはシューズカバーまたは専用の履物の着用が推奨されます。

 

・軽度の感染症の動物のケア

いわゆる「猫かぜ」や「ケンネルコフ」といった軽度の感染症の動物のケアの際には、その動物を扱う前後に手洗い及び手指消毒を行い、使い捨て手袋を着用します。また上着を着用しケアごとに交換することが推奨されます。汚れた囲いに入る際にはシューズカバーまたは専用の履物の着用が推奨されます。

 

・重度の感染症の動物のケア

パルボウイルス感染症やジステンパーなど、重度の感染症に罹患した、もしくはそのおそれがある動物のケアの際には、その動物を扱う前後に手洗い及び手指消毒を行い、使い捨て手袋を着用します。また上着の着用が必須で、使い捨てガウンが推奨されます。囲いに入る際にはシューズカバーまたは専用の履物の着用が必須です。

 

アルコール製剤の使用

流水が利用できない場所では手指消毒に60%以上のアルコール製剤が用いられることがありますが、明らかに汚れた手に使用しないこと、そしてそれだけに頼らないことに注意が必要です。