私は地方公務員として、業務命令に基づき、犬猫の殺処分を実施してきました。せめてもの償いではないですが、動物を苦しめない安楽殺の実施のため、ガス室を稼働させないことに努め、またペントバルビタールNaの注射手技についても日々研鑽を重ねてきたつもりです。
私の個人的見解としては、たとえ獣医学的に必要な処置であったとしても、動物の安楽殺には反対です。生き物として生まれた以上、最後まで生き抜くことにこそ意味があると思っているからです。「死よりも過酷な生もある」と安楽殺を正当化する意見もありますが、ならば人間の安楽死も認めるべきです。ましてや動物は「いっそのこと殺してほしい」などと意思表示していません。人間が勝手にそう思っているだけなのです。
もちろんそこには苦痛を取り除く処置が必要です。幸せな最期を迎えるための環境も必要です。現在の行政システムにそれを求めるのは、どだい無理です。公務員減らしもそうですが、そもそも公務員になりたいという奇特な獣医師も、自治体間で奪い合いになっています。財政再建の旗のもと、予算も減らされ続けています。収容スペースにも余裕はありません。緩和ケアをしながら重症の動物を看取るような余裕は、どこの自治体にもないはずです。
「看取りボランティア」に預けるという手もありますが、その場合においても獣医師によるサポートは必要不可欠です。いっそのこと「全ての動物を最期まで看取る自治体」を宣言すれば、多くの優秀な獣医師が就職してくれるのではないでしょうか。動物を殺す仕事に就きたいと願う獣医師はまずいないでしょうから。それを見た自治体が続々とまねをして、全国に広がる…。
そうなってはじめて、言葉遊びではなく真の意味で「殺処分ゼロ」を達成したことになるのでしょう。